私は先にDVDの方を見たのですが、ほぼ原作通りでした。
ただ、コミックにはコミックの世界、映像には映像の世界があるので、両方楽しんでほしい素晴らしい作品だと思います。
原爆の伝え方って、色々あるんだなと思いました。
「はだしのゲン」や「黒い雨」みたいな、直接的な伝え方もあるし、この作品のように今の時代と織り交ぜながら、自分なりの人生を真摯に生きようとする姿を伝える方法。
どちらも大事だと思うけど、この作品は刺激の強いシーンなどは出て来ないので、グロい絵は苦手だなという人も大丈夫。
静かに考えさせられる作品だなと思います。
◆夕凪の街
前半は被爆から十年後。
主人公皆実の姉は被爆直後に亡くなっており、弟は水戸の叔母夫婦の元に疎開していたが、そこからは戻らずに(広島には戻りたくないと)養子に出され、母と2人、ものすごく質素な暮らしをしている。
職場からの帰り道はかかとを減らさないため、途中で靴を脱いで歩く。
家は雨が降れば屋根からは雨漏り、家の中はなめくじの足跡・・・
そこまでして倹約するのは、水戸に住む弟に会うため。
若い女性だもの、もっと楽しみたいと思うことはあるだろうに、全て我慢。それでも静かに笑顔で生きている皆実にはとても好感が持てる。
そして職場でちょっといい感じになった男性と、これからどうなるのか?と期待を持った矢先に、どんどん体調が悪くなっていく。
お前の住む世界はここではないと誰かの声がする
幸せだと思うたびに、この声に引きずられてきた皆実。
なぜ私は生き残ったのか。
死なずに残されたのか。
この世にいてもいいのか。
すべては亡くなった姉や妹にすまないという気持ちから、十年前のあの日の光景を忘れられずにいる皆実。
忘れられるはずは無いだろうと思う。
やっぱり、という思いと、どうして、という思いで、悔しかっただろう。
最後はもう目も見えないので、台詞だけのページがある。
そこが、よけいに悲しい。
◆桜の国
後半はその数十年後。
皆実の弟の娘が主人公になっている。
最近の父の不審な行動に、娘は友達と後をつけてみるが・・・
世代を超えても原爆が落とす影。
それを、しっかりと見つめている作品だと思う。
しかし、アメリカに落とされた原爆のせいで、日本人が日本人を差別するなんて、なんと悲しいことかなと。
これまで、原爆を扱った作品というのはどうしても暗いイメージを引きずりがちで、もちろんそれは内容が内容だけに仕方のないことなんだけれど、その悲惨さをストレートには描かないこういう作品ももっと出てくれば、逆に心にしみやすいのではないかとも思う。
特に、中高生など感受性の豊かな世代に見てほしい。
絵が下手すぎる、というレビューもあったけれど、私は十分感動した。
たしかに、すごくうまい絵ではない。
だけど、作者が伝えようとしていることはしっかりと伝わっている。
映画もとても良かったです。