ロードレースにはエースとアシスト、という役割がある、くらいのことは知っていたけれど、それ以上の知識はなく、物語に入り込めるかなあと思いながら読み始めたが、あっという間に違和感なくこの世界に入り込めた。
すごい、これ。ぐんぐん引き込まれる。
たぶん、男性とか女性とか関係ないと思う。騙されたと思って読んでみてほしい。
なんて過酷なスポーツだろう
ロードレースとはなんと過酷なスポーツだろう。日本人が好きそうなスポーツなのになあ。
エースを勝たせるために自分の勝利を捨てて”犠牲”になるアシスト。
個人競技のようで、団体競技。団体競技のようで個人競技。なんとも不思議なスポーツだ。
テレビでもあまり放映されないから、ツール・ド・フランスの名前くらいしか知らなかった私でもすんなりと読めて、一緒にコースを走っているような疾走感を味わえた。
もちろん、これはフィクションだから脚色している部分もあるし、Amazonのレビューなどでは「ロードレースはこんなものじゃない!」と噛み付いている方もいらっしゃるけれど、ロードレースの概要を知ってからレースを見るとすごく面白いスポーツなんだよ、ということがわかるわけだから、それだけでも十分なエンターテイメントになっていると思うわけで。
ただ・・・この物語のキーパーソン、石尾さんの人物像、キャラクターにもう少し踏み込んで描いて欲しかったと思う。
個人的には、すごく好きなキャラなんだ。
ストイックでプロ意識の固まりのような人。
その辺が少し薄い感じがして、”惨劇”の原因が思い切り”フィクション”になってしまう。
もう少し物語として完成されたものにするならば、読み手がもっと感情移入できるよう、石尾さんのストイックさをこれでもか、と描いてあった方が、ラストに納得がいったかな、と思う。
とはいえ、このスピード感。
ぜひ味わってみてほしい。