『古今著聞集』は鎌倉時代に編集された説話集です。
ちなみに、
- 沙石集
- 十訓抄」
- 日本霊異記
- 宇治拾遺物語
- 発心集
- 今昔物語集
なども説話集。同じジャンルになります。
平安末期の『宇治大納言物語』『江談抄』などの流れをくんでいます。建長6年成立。著者は橘成季(たちばなのなりすえ)。20巻という巻数は勅撰和歌集にならい、書名は古今和歌集に倣った。著聞という言葉は、「伝聞」「伝承」という意味。
古典は苦手、という人にこそ読んでみてほしいです。
こういう、軽めのものから入れば、「古典は難しい」という先入観を消せると思います。
橘成季は清少納言ゆかりの人?
従来、橘成季は橘則光(清少納言の離別した夫)の子孫であるとの説があったが、近年これを疑問視する説もある。また橘有季を父とする説もある。
(レファレンス協同データベースより引用)
少々わからないところもあるようですが、ゆかりの人だったら面白いなと思う。
説話集とは?
神話、伝説、御伽噺など、伝承されてきた話全般を含む言葉。ただ、伝承されているうちに話が変わってしまうこともあるので、なんとなく結末がおかしくなっている話もあります。
こういう話って、橘さんはどうやって集めてきたんだろう。各地を訪ね歩いたらしいけれど、今みたいに便利な世の中じゃない。
まして、官職を引退した後に始めたというからすごいですね。
説話集は大学受験問題でもよく出ます
「古今著聞集」と同時代の成立は、「宇治拾遺物語」「沙石集」「十訓抄」。
「日本霊異記」と「今昔物語集」は平安時代の成立ですが、この間にかの有名な紫式部の「源氏物語」があります。
「発心集」は鎌倉初期、著者は鴨長明です。
楽しい昔話だと思う
さて、どんな話がのっているのかといいますと、昔話です。ちょっと教訓めいた話というか。
数ある話の中から、2つご紹介しましょう。
しらみの仇討ち
旅の商人に宿の柱に閉じ込められ、1年後に解放されたしらみ。商人は1年も閉じ込めて悪かったなと血を吸わせてやるが、そのときの毒素が元で死んでしまった。人はしらみの仇討ち、恩知らずと責めたが、しらみにしてみれば1年も苦しめられたんだから当然だ、ってこと。
へびの目
ある日、川でカニをとっている男に遭遇したイネは、有り金はたいてカニを買い取り、川に逃してやった。父はその話を聞いて娘を褒めた。またある日、今度は父がカエルを飲み込もうとしている蛇に遭遇する。
あまりに気の毒なので、娘をやるからカエルを食べるのをやめると言ってしまった。蛇は約束通りやってきた。
しかし娘をやりたくない。どうしようと思って観音様にお祈りしていたところ、外では何やら物音が。朝になって戸を開けてみると、蛇の体が切り刻まれていた。どうやらカニが恩返しにきたらしい。
大人も子供も楽しめる
こちらの本は、阿刀田高さんの書いたものなので、とても読みやすくなっています。
阿刀田高さんプロフィール(新潮社より)
1935(昭和10)年、東京生れ。早稲田大学文学部卒。国立国会図書館に勤務しながら執筆活動を続け、1978年『冷蔵庫より愛をこめて』でデビュー。1979年「来訪者」で日本推理作家協会賞、短編集『ナポレオン狂』で直木賞、1995(平成7)年『新トロイア物語』で吉川英治文学賞を受賞。他に『ギリシア神話を知っていますか』『源氏物語を知っていますか』『知的創造の作法』『アンブラッセ』『地下水路の夜』など著書多数。
阿刀田高さんのショートショートが大好きですが、古典をわかりやすく書いたシリーズも面白いんですよ。
子供はもちろんですけど、大人が読んでも十分面白いです。