やっぱり安心する。 そんな感じのする火村シリーズ。
今回は「若さ」がテーマだということですが、私は火村先生の学生時代の話がイチオシなのです。
火村ファンならきっと気に入るはず。
火村先生の学生時代の話
表題作もおもしろかったが、私のイチオシは「探偵青の時代」。 火村英生が大学生の時のちょっとした推理物語。
学生時代の話というと、ごくたまにアリスとの出会いの場面(大教室でアリスが書いていた小説を無断で読み始めたとか、面白いものを読ませてもらったからと言って学食でカレーをおごってくれた話)は出てきますけど、学生の頃からすでに名探偵の素質があったんだなということがわかるエピソードは今の所これだけかなと思います。
やっぱり彼は大学生の頃から火村英生だったんだというおかしな感想を持ちつつ、そうそう、そうでないと困る、とも思った。
付き合いは悪いけれど、決して嫌われているわけではなく、彼をどうやったら飲み会に誘えるかと一計を案じて、「勉強会」という名目で呼び出すわけです。
学生の一人の家にみんな集まっていたんだけど、図書館で調べものをしていた彼はちょっと遅れてくる。
・・・と、遅れてやってきた時から、何やらおかしいことに気づいてしまう、この勘のよさというのはきっと天性のものだったんだろうなあ。
みんな、あれこれといいわけするんだけど、するほどドツボにはまる。
意外だったのは、その状況で火村君が「疎外感」を感じていること。
そうです、彼は別に人間嫌いってわけじゃないんだなと、こういう場面からも垣間見える。
冷静ではあるんですけど、火村先生は決して人間嫌いというわけではないですね。だから、みんなが隠し事をすることに対して、ちょっと疎外感を感じたりもする。
時折見せるそんな人間臭いところもスキだったりします。
到着してすぐにそれを見抜いてしまった名探偵。その理由は、火村ファンなら誰もが知っていることと関係があるんです。
まあ、事件の真相を見抜くきっかけになったエピソードも面白いなと思いますが、常に冷静なところは今と変わっていないんですね。
こういう過去のエピソードも交えた作品は微笑ましくていいな。 たまにこういうのをお願いします、と思いました。
表題作ももちろん面白い
表題作ももちろん面白いですよ。
「菩提樹荘」と名付けられた別荘で遺体が見つかる。なぜかパンツ1つで、身体半分池に使った状態で。
被害者は女性関係にちょっとだらしなかったようで、同時に複数の女性とつき合っていたような人だから、そっち方面で恨みを買ったのかと思われたのですが・・・。
被害者がなぜ池に入っていたのか、服を着ていなかったのか、という理由が最大のミステリー。
こういうのって、わかるようでわからないんだよなあ。
『アポロンのナイフ』はドラマ化されていたそうで、知らなかった〜。
でも、火村シリーズは原作が断然いいので、ドラマ化しなくていい。
火村先生のイメージが崩れる。彼を演じられる俳優は今のところ日本にはいない。