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文章の書き方を教えない、「ぼくらの文章教室」

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ぼくらの文章教室

文章教室といわれれば、文章の書き方を教える本だと思うでしょう。でもそうではないのです。

「文章を味わうための本」「文章の良さを感じるための本」という感じでしょうか。

書き方じゃなくて、たくさんの文章を引用しながら、その文章のどこに惹かれるのか、心を動かされるのかを解説していきます。

その「感じ方」を通して、文章を書くとはどういうことなんだろう、いい文章、名文ってどういうものなのだろうということを考えるのです。

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文章には顔がある

のっけからやられてしまう。なんと、最初に引用されているのはおばあちゃんの遺書。

文章だけを見たら、とてもうまい文章などではなく、むしろ日本語になっていないところすらある。

それなのに、どうしてこれだけの圧倒的な力を持っているのか。言葉もでないほど圧倒されてしまうのか。

それは、この文章に「顔」が見えるからではないかと。

誰しも皆違う顔を持っていて、個性があるけれど、それがきちんと文章に出ている、文章を「顔」にすることが出来たのがおばあちゃんの文章なのではないかと。

そうか、だからありありとこのおばあちゃんの生きている時の様子、この遺書を書いている様子までが浮かんでくるんだなと納得しました。

そういう「読み方」をしていくのがこの文章教室なんです。

「いい文章」ってなんだろう

直接的な文章の技法を伝えているのではなくて、ところどころで「名文」を引用しながら、なぜこの文章に心を動かされるのか、ということを解説しながら文章の書き方を学んでいく、そんな本です。

だから、「すぐに小説が書けるようになりたい!プロットの組み立て方を知りたい!」という人には向いていません。

その代わり、書きたい思いがある、伝えたいことがある、でもその思いをどうやって伝えいいのかわからないと模索している人に、何かしらのヒントになるのではないかと思う。

たくさんの文章を引用しながら、なぜこの引き込まれるのか、ここに何があるのかということを理解していこうという本だから、単なるテクニックではなくて文章の本質的なことを知りたいという人には是非おすすめしたいのです。

個性って何だろう、その人にしかかけない文章って何だろう。文章って何のためにあるんだろう、誰に何を伝えるため?そんな風に悩んでいるのなら、その答えが見つかるかもしれないです。

いい文章はテクニックじゃない。

音程通りに歌っている歌、楽譜通りに忠実に歌っている歌がうまいとは限らないですよね。音程をやや外したりするんだけど、何だか心に響くとか、圧倒される歌ってあると思うんです。

それと同じで、うまい文章=心に響く文章じゃないということがよくわかります。

だからといって、自分がどうやって書いていけばいいのかはすぐに答えが出ないのですが、「書く」ことよりも「感じる」「考える」力を強化した方がそれが文章に生きてくるのではないかと思いました。

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私はこの本で紹介されている鶴見俊輔という哲学者に興味を持ち、氏の著作を何冊か読みました。

この本を読んでいなかったら出会わなかった人ですが、哲学者なのに言うことは難しくない。だけどもとても大切なことを教えてくれている先生です。たくさんの名文が紹介されているから、この本を読んだらここから新たな出会いがあるかもしれないですね。

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