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すべて猫が出てくる話。「猫が見ていた」アンソロジー

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私は猫が大好きです。だから、「猫」ってタイトルについているとつい目がいってしまう。

しかも、有栖川有栖さんの名前もあったので、即買いしたのが「猫が見ていた」というアンソロジーです。

火村先生が出ているとなれば、買わずにはいられないよお、火村ファンだからねえ。

アンソロジーってすごくお得な感じがしませんか?1冊で、何人もの作家さんに会えるし、普段は読まない作家さんもいるので、世界が広がりますよね。

そう、アンソロジーってすごく世界が広がる。初めてだとなかなか手が出なかった人でも、入っているから仕方なく読むでしょ、そうすると「こんな作家さんがいたんだ!」と思っても見ない出会いに感動したりして。

今回も、いい作家さんに出会うことが出来ました。

あ、もちろん、猫がらみの話も面白かったですよ。

全体のあらすじ

ざっとどんなお話が入っているかご紹介しますね。

猫のアンソロジーといっても、別に猫が主役のものばかりじゃないし、猫を可愛がるという話でもありませんので、「猫の話でほっこりしたい」という人にはむいていないかも。

◆湊かなえ「マロンの話」
猫が主役。でも、元々はマロンではなくて、野良猫だったマロンの親が小説家さんの家に棲みついて・・・というところから始まります。猫を飼うことに反対していた父親が段々変わっていく様子は面白い。

◆有栖川有栖「エア・キャット」
火村先生だけでなく、小夜子先生まで出てくるので、ファンには嬉しい短編でした。安定の面白さ。どうしてそんなことがわかっちゃうの?という感じですが、火村先生が猫好きだからかしら。

◆柚月裕子「泣く猫」
自分を捨てた母親の死に際して、母の思いを知る主人公。母だとも思いたくなかった人のために流れる波だ。

◆北村薫「『100万回生きた猫』は絶望の書か」
主人公は出版社に勤める編集者で、野球が好きな作家さんのために草野球チームを作る。損メンバーの中に「『100万回生きた猫』は、絶望の書だと思う」なんていう人がいて、主人公は憤慨するんだけれど、意外にも入院中の父親はその意見に賛同した・・・。

◆井上荒野「凶暴な気分」
同じマンションに住む女性の猫を家に連れ帰ってきた主人公。返さないとと思いつつ、返さない。それは、自分の愛人が経営する自費出版会社に作品を持ち込んで来た女性だったから。そしてうまくいかない愛人との関係。

◆東山彰良「黒い白猫」
ちょっと不思議な世界のお話。台湾の裏社会のようなイメージ?少女はどうして黒猫になりたかったのか。ちょっと切ない話。

◆加納朋子「三べんまわってニャンと鳴く」
モバゲーに課金しまくる今時の若者のお話かと思いきや最後はちょっとほろり。さすが、加納さん。

どうして漱石の「三四郎」が事件のカギだとわかったのか

今回の火村先生の活躍はですね、いつもの論理的な推理ではなくて、ある意味神がかり的というか、どうしてそんなことがわかっちゃたの???という感じなのですが、猫好きと大いに関係があるのですよ。

さて、火村先生の飼っている猫は、

  • 茶トラの瓜太郎(婆ちゃんが拾った子。話しかけられるのが好き)
  • 白黒の小次郎(火村先生が拾って来た子。スキンシップが大事でお腹が空いたアピールがすごい)
  • 紅一点の桃(火村先生が拾って来た子。6ヶ月くらいまで野良生活だった。婆ちゃんの命名)

かわいい。殺人事件の現場をフィールドにしながら、雨の日に鳴いていた猫を放っておけなくて拾ってきてしまうという、情の深さがたまらん。そのギャップ。

この作品のタイトルは「エアキャット」ですが、まだ見ぬ猫を思い描きながら名前なんて考えてしまうという、どんだけ猫好きなのよというところですよね。

火村先生にとって猫って癒しなんだろうなあ。私も猫になりたい。