長編もいいけれど、短編集も楽しいしゃばけシリーズ。こちらは、しゃばけシリーズの第2弾。
仁吉ファンは読むべし。
最初の『しゃばけ』を読んでいなくても楽しめますが、最初から読んだ方が、妖(あやかし)の世界を楽しめると思います。
◆収録作品
- ぬしさまへ
- 栄吉の菓子
- 四布の布団
- 空のビードロ
- 仁吉の思い人
- 虹を見し事
ぬしさまへ
畠中恵 新潮社 2005年12月
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今回よかったなあと思ったのは、「空のビードロ」と「仁吉の思い人」です。
「空のビードロ」は、一太郎の腹違いのお兄さん、松之助の話です。松之助はとても気立てが良くて、優しい人。自分の生まれた境遇を恨むこともありません。
普通、弟が大店で悠々と暮らしていて、腹違いとはいえ自分は兄なのに・・・と逆恨みしそうなものですよね。なぜ自分は奉公に出て働かなくてはいけないのか。
そんな風には思わないのが、松之助のいいところです。
しかし奉公先でちょっとした事件が起きて、店を出る羽目になってしまいます。
ここで、第1作の『しゃばけ』と繋がるところがあるので、やはり順番通り読んでおいたほうがいいでしょうか。一太郎も気立てのいい、真っ直ぐな性格だし、兄弟二人で長崎屋を盛り立てていけたらいいなと希望の持てる作品です。
「仁吉の思い人」は、千年も前に遡ったお話。仁吉は妖ですが、とても端正な顔立ちなので、現代でもモテモテなわけです。あちこちのお嬢さんから付け文が絶えることはなく、街を歩いても大人気なのに、もちろんそんなことには惑わされない。だって、一太郎一筋だから。
その仁吉が、実は千年前から想いを寄せている人がいて・・・仁吉の儚い恋の物語。モテ男だからこそ、思い通りにならない恋を大事にするのかなあ。妖でも恋をするのね。叶わない恋の話でも、読んだ後にホッとします。
いつも元気に寝込んでいる一太郎ですが、妖たちとの暮らしはとても楽しいんでしょう。振り回されながらも、端々に若旦那の愛情が感じられます。一作目の長編とはまた違った面白さがありました。
短編集は、基本的にどこから読んでもいいから好き。